子どもに勉強をさせるのは、親にとって大きな悩みの一つです。 子どもが自ら進んで勉強するようになれば、親も安心して見守ることができます。 しかし、どうすれば子どもに勉強の習慣を身につけさせることができるのでしょうか?
この記事では、世界中の子育て事例や理論をもとに、「未来の子育てのスタンダード」を解説した 『世界標準の子育て』 (船津徹著、ダイヤモンド社刊) から、勉強する子どもが育つ家庭で行われている3つのことを紹介します。
これらのことを実践すれば、子どもは自信と思考力とアイデンティティを持って、一生学び続ける力を身につけることができるでしょう。
1.勉強をする時間・場所・内容を決めておく
勉強をするときには、時間・場所・内容を決めておくことが大切です。 これは、子どもにとって勉強を始めやすくし、集中力を高める効果があります。 時間は、毎日決まった時間帯に勉強するようにします。
例えば、「夕食後の7時から8時まで」とか、「朝食前の6時から7時まで」とかです。 場所は、勉強専用の机や部屋を用意するか、あるいはリビングやダイニングなどでも構いませんが、テレビやゲームなどの誘惑がないようにします。 内容は、宿題やテスト対策など必要なことから始めますが、それだけではなく、自分の興味や好奇心に応えるような学びも取り入れます。
例えば、「音読」「漢字」「計算」などと細かく分けてしまえば、負担感が少なく感じます。 また、それぞれのステップに「何分間」と細かく時間を決めると、「あと何分で終わる」と気持ちを準備できるので、手をつけやすくなります。
*スモールステップでやるメリット
●目標が明確になり、達成感が得られる
●無理せず継続できる
●集中力が持続する
●学習効果が高まる
目標が明確になるということは、自分が何をすべきかわかりやすくなります。 例えば、「音読10分」「漢字20問」「計算30問」と具体的に決めておけば、「これだけやればいいんだ」と安心できます。 また、小さな目標を達成するたびに、「やった!」という気持ちになります。
これは、脳内でドーパミンという快楽物質が分泌されることによって起こります。 ドーパミンは、やる気や集中力を高める効果があります。 つまり、スモールステップでやることで、自分を褒めて励ますことができるのです。
無理せず継続できるということは、自分のペースで学び続けることができます。 例えば、「1時間勉強する」と決めても、途中で飽きたり疲れたりしてしまうことがあります。 しかし、「10分勉強して10分休憩する」というサイクルを繰り返せば、気分転換もできて長く続けられます。
また、「今日はこれだけやればいい」という目安があれば、「明日も頑張ろう」という気持ちになります。 つまり、スモールステップでやることで、自分に負担をかけずに学び続けることができるのです。
集中力が持続するということは、自分の注意力を高く保つことができます。 例えば、「1時間勉強する」と決めても、途中で気が散ったり他のことを考えたりしてしまうことがあります。 しかし、「10分勉強する」と決めれば、「あと何分で終わるかな」という意識が働きます。
また、「これをやったら次はあれだ」という流れがあれば、「どんな問題が出るかな」という期待感が生まれます。 つまり、スモールステップでやることで、自分の興味や関心を引き出すことができるのです。
学習効果が高まるということは、自分の知識や能力を向上させることができます。 例えば、「1時間勉強する」と決めても、最初にやったことや最後にやったことしか覚えていないことがあります。
これは、脳の記憶に関する特性によって起こります。 脳は、最初に入ってきた情報(プライマシー効果)や最後に入ってきた情報(リーエンシー効果)を優先的に記憶しようとします。 しかし、「10分勉強する」と決めれば、「これを覚えておかないと」という意識が働きます。
また、「これをやったら次はあれだ」という流れがあれば、「これはあれに関係しているんだ」という関連付けができます。 つまり、スモールステップでやることで、自分の記憶や理解を深めることができるのです。
2. 「遊ぶ時間」も確保する
勉強だけではなく、「遊ぶ時間」もしっかりと確保することが大切です。 これは、子どもにとってメリハリをつけてリラックスする効果があります。 遊ぶ時間は、勉強時間の前後や合間に設けます。
例えば、「勉強したら30分遊んでもいいよ」とか、「勉強の合間に10分休憩して遊んでもいいよ」とかです。 遊ぶ内容は、子どもが好きなことや楽しいことを自由に選ばせます。
例えば、「外で遊ぶ」「絵本を読む」「お絵かきする」「お人形遊びする」「パズルやカードゲームをする」などです。 遊ぶ時間は、子どもの集中力や学力を高める効果もあります。 フィンランドで行なわれた学力についての調査から、休み時間を与えられた子どもたちのほうが、座っている時間が長い子どもたちより学力が高くなることがわかっています。
アメリカの保健福祉省のレポートからも、体を使った活動によって脳の血流が増加し、酸素が増え、脳の働きに役立つことが明らかになっています。
*遊ぶ時間を確保するメリット
●ストレスを解消できる
●創造力や想像力を育む
●社会性やコミュニケーション能力を高める
●身体的な健康を保つ
ストレスを解消できるということは、自分の心を落ち着かせることができます。 例えば、「勉強が難しい」「テストが心配」「友達と喧嘩した」というような悩みや不安を抱えているときには、遊ぶことで気分転換できます。 また、「楽しかった」「うまくできた」「誉められた」というような喜びや満足感を感じることで、自己肯定感や自信が高まります。
これは、脳内でエンドルフィンという快楽物質が分泌されることによって起こります。 エンドルフィンは、ストレスや痛みに対抗する効果があります。 つまり、遊ぶ時間を確保することで、自分の感情をコントロールすることができるのです。
創造力や想像力を育むということは、自分の考えや表現を豊かにすることができます。 例えば、「お絵かきする」ときには、自分の頭の中にあるイメージを紙に描き出します。 また、「お人形遊びする」ときには、自分の思い通りにお人形の声や動きや感情を演じます。
これらの遊びは、脳の右半球を活性化させる効果があります。 脳の右半球は、直感や感性や創造性に関係しています。 つまり、遊ぶ時間を確保することで、自分の思考や表現を多様化することができるのです。
社会性やコミュニケーション能力を高めるということは、自分と他者との関係を良好にすることができます。 例えば、「外で遊ぶ」ときには、他の子どもたちと一緒に走ったり跳んだり投げたりします。 また、「パズルやカードゲームをする」ときには、他の子どもたちと一緒にルールを決めたり協力したり競争したりします。
これらの遊びは、脳の前頭葉を活性化させる効果があります。 脳の前頭葉は、判断や計画や自制や社会性に関係しています。 つまり、遊ぶ時間を確保することで、自分と他者とのコミュニケーションや協調を学ぶことができるのです。
身体的な健康を保つということは、自分の体を丈夫にすることができます。 例えば、「外で遊ぶ」ときには、体を動かして筋肉や骨や心臓や肺を鍛えます。 また、「絵本を読む」ときには、目を使って視力や視野や視点を鍛えます。
これらの遊びは、体の各部位に栄養や酸素を送る効果があります。 体に栄養や酸素が行き渡ると、免疫力や代謝力や回復力が高まります。 つまり、遊ぶ時間を確保することで、自分の体を健康に保つことができるのです。
3. 「ゲーム」にしてしまう
勉強をするときには、「ゲーム」にしてしまうことも効果的です。 これは、子どもにとって勉強を楽しくし、やりがいを感じる効果があります。 ゲームにする方法は、様々ですが、例えば以下のようなものがあります。
●時間制限を設けて、何問正解できるか挑戦する
●正解したらポイントやスタンプをもらえるようにする
●難易度やジャンルを選べるようにする
●親や兄弟と対戦や協力して遊ぶ
●自分で問題を作って出題する
ゲームにするときには、子どものレベルや興味に合わせて適切な難易度や内容を選ぶことが大切です。 また、子どもが成功したときには、思いきりほめてあげることも忘れないでください。
行動分析学者の奥田健次氏は、なかなか宿題を始めない子には、まずはゲームっぽく「お母さんがいまから2階に行って帰ってくるまでに宿題を始められるかな。 3分ですぐに帰ってくるからね。 あ、まだやったらダメよ。 お母さんがこの部屋を出てからスタートね! 」などと伝えることが効果的だといっています。
もし子どもが3分後もまだ遊んでいたら、3分という感覚が見積もれていないということなので、次からは1分、30秒とさらに短くします。 戻ってきた親が、宿題を始めたことを思いきりほめると、子どもは大きな達成感を感じることができると奥田氏はいっています。
*ゲームにすることのメリット
●モチベーションが高まる
●挑戦心や達成感が生まれる
●論理的思考や問題解決能力が向上する
●楽しみながら学べる
モチベーションが高まるということは、自分の意欲や興味を持続させることができます。 例えば、「時間制限を設けて、何問正解できるか挑戦する」というゲームをするときには、「もっと早く答えられるかな」という気持ちになります。 また、「正解したらポイントやスタンプをもらえるようにする」というゲームをするときには、「もっとたくさん集めたいな」という気持ちになります。
これは、脳内でノルアドレナリンという興奮物質が分泌されることによって起こります。 ノルアドレナリンは、注意力や集中力や記憶力を高める効果があります。 つまり、ゲームにすることで、自分の学びに対するモチベーションを高めることができるのです。
挑戦心や達成感が生まれるということは、自分の能力や成果を認めて喜ぶことができます。 例えば、「難易度やジャンルを選べるようにする」というゲームをするときには、「自分に合ったレベルで挑戦したいな」という気持ちになります。 また、「親や兄弟と対戦や協力して遊ぶ」というゲームをするときには、「自分の力を試したいな」という気持ちになります。
これは、脳内でセロトニンという幸福物質が分泌されることによって起こります。 セロトニンは、自己評価や自尊心や幸せ感を高める効果があります。 つまり、ゲームにすることで、自分の挑戦心や達成感を生み出すことができるのです。
論理的思考や問題解決能力が向上するということは、自分の知識や技能を活用して答えを導き出すことができます。 例えば、「自分で問題を作って出題する」というゲームをするときには、「どんな問題が面白いかな」という気持ちになります。 また、「他の子どもたちの問題に答える」というゲームをするときには、「どうやって解くかな」という気持ちになります。
これは、脳の左半球を活性化させる効果があります。 脳の左半球は、言語や数字や論理や分析に関係しています。 つまり、ゲームにすることで、自分の論理的思考や問題解決能力を向上させることができるのです。
楽しみながら学べるということは、自分の学びに対する楽しさや満足感を感じることができます。 例えば、「時間制限を設けて、何問正解できるか挑戦する」というゲームをするときには、「ドキドキしながら答えるのが楽しいな」という気持ちになります。 また、「正解したらポイントやスタンプをもらえるようにする」というゲームをするときには、「自分の成果を見て嬉しいな」という気持ちになります。
これは、脳内でオキシトシンという愛情物質が分泌されることによって起こります。 オキシトシンは、信頼や親密感や愛着感を高める効果があります。 つまり、ゲームにすることで、自分の学びに対する楽しさや満足感を感じることができるのです。
まとめ
勉強する子どもが育つ家庭で行われている3つのことは、「時間・場所・内容を決めてスモールステップでやる」「遊ぶ時間も確保する」「ゲームにしてしまう」ということでした。
これらのことを実践すれば、子どもは自信と思考力とアイデンティティを持って、一生学び続ける力を身につけることができます。
親自身も勉強の習慣を持ち、子どもの興味や好奇心に応えるような学びを提供してあげましょう。
子どもの未来のために、一緒に楽しく学んでいきましょう!