「もう、これ以上は1ページも進めない……」
リビングの机で、中学に入ったばかりの娘が完全にフリーズしていました。
山積みのプリントを前に、魂が抜けたような顔。
(あぁ、このままだと親子で寝不足になる未来しか見えない)
私も私で、横で見守るだけでヘトヘト。
勉強って、どうしてこうも「重苦しい空気」を連れてくるんでしょうね。
「ねえ、ちょっとこれ見て」
私はふと思いつき、スマホで調べていた「方角」のページを娘に見せました。
「今日からここは南の暗記スポットにするから」
娘はポカンとした顔で私を見ています。
「え、風水? 掃除でもするの?」
「違う違う。南に向かって座ると暗記力が上がる……っていう設定!」
これ、実は私が最近ハマっているエンタメ復習術なんです。
「東は英語、西は数学。北は理科で、南は社会」
勝手にルールを決めて、家のあちこちに「科目スポット」を作りました。
娘は最初、「何それ、意味わかんない」と呆れ顔。
でも、いざ「南の机」に移動して単語帳を開くと、何かが変わったんです。
「……あれ、なんか攻略してる感じがする」
この一言が、今夜の転換点でした。
ただの苦行だった復習が、急にゲームのクエストに変わった瞬間です。
「次は西の数学ギルドに行ってくる!」
さっきまで死んだ魚のような目をしていた娘が、自分から立ち上がりました。
(よし、食いついた……!)
ただ椅子に座ってペンを動かすだけだと、脳ってすぐに飽きちゃうんですよね。
でも、「設定」を加えるだけで、脳は勝手にワクワクし始める。
「お母さん、東の英語スポット、おやつ持ち込み可にしていい?」
「……今回だけ特別ね」
そんなやり取りをしながら、気づけば予定していた復習がすべて終わっていました。
いつもなら2時間はかかる量が、なんとたったの45分。
勉強を「遊び」に変えるのは、立派な才能だと思うんです。
これまでは「真面目にやりなさい」って口癖のように言っていたけれど。
そんな言葉、子供のやる気を削るだけだったんですよね。
大人だって、仕事がゲーム感覚で進んだら最高じゃないですか。
「明日は北のキッチンで理科の実験風にやるわ」
そう言って笑う娘を見て、ようやく私も肩の力が抜けました。
完璧に理解することよりも、まずは「机に向かうのが嫌じゃない」こと。
それが何よりの近道なのかもしれません。
勉強は、苦行じゃなくていい。
さあ、明日はどの方角で遊ぼうかな。
明日の予習も、楽しみ。

