これまでの長い間の教育経験において、実にいろいろな子供に対する考えの親がいます。とにかく、他人の忠告やアドバイスに耳を貸そうとしない親も少なくありません。そのくせ、他の子供の成績や子育ての仕方が気になってしかたがありません。
過信は禁物
これまでも執拗に子供の本当の実力を知ることができるのは、あくまでも親であると主張してきました。これも正確には、わが子のことを他人よりは少しばかり知っているという言い方のほうが合ってると思います。親は、自分の判断力を決して過信してはいけません。だからといって、自身を失うようでは親としての義務を放棄することになります。素直な気持ちで、子供と接すれば良いのです。
子供の能力は、ほめて喜び足して伸ばす
子供の優れた能力には心からほめて喜んでやり、努力不足の場合は親でありながら人生の先輩としてアドバイスをしてやればいいのです。これは、愛情と冷静さを上手に使い分けることであると思います。同じ血の通った親としての愛、人生の先輩としての冷静な目、さらには子供の急な変化をゆとりも持って見守る、これらがあって子供の能力を正しくふさわしくのばし評価することができると思います。
親+子=½+½=1➡信頼関係
そして、子供に対する評価の仕方も、親である自分の間違いかもしれない、まだ子供の力を十分知り得ていないが、ここまでの範囲ならこの判断でいいだろうという謙虚な姿勢が大切であるということです。私は、親子がお互いを理解する関係は、
必死になるのではなく半々で一つの親子の信頼関係が成立するくらいが隔たりが少なく程よいと思います。やはり、子供を育てるということは一筋縄ではないということが痛感されます。
子育ての極みは心を育てること
私たちは、日常なにげなく子供を育てるという言い方をしますが、それは具体的にどういうことなのか詳しく説明を、と要求されると考えこんでしまいます。この「育てる」という言葉の中には、実に様々なたくさんの要素が含まれています。
まずは、健康的な生命活動の維持や提供が必要です。いわゆる毎日の食事がそれにあたります。それから、社会に出て生きてゆくための知識や知恵を教えなければなりません。良い学校教育を与えたいと考えるのがこのためです。また、家庭での躾も学校教育と同じように大切な手段になります。さらには、もう一つ心を育てることも子育ての重要な要素であると感じます。
子供のヤル気の発動所はどこ?
私はこれまでの教育経験上、子供の実力は、知識の量や技術の程度だけではわかるものではないと言ってきました。なぜなら、顕在的な見える力は本来持ち合わせているはずの実力の少しの割合でしかないからであり、もっと大切なことは潜在的な目に見えない部分つまり心の中に秘められているからです。これが子供のやる気の発動を促すのです。
要するに子供であっても大人であっても、結局は自分自身の力で自分の心を育てて行かなければならないのです。しかし、私たちは生まれた時から心の扱い方を知っているわけではありません。心を育てるためにはどうしても第三者のアドバイスなどが必要です。子供にとってはそれが親の存在なのです。
過大評価も過小評価もしない、ありのままに
心の在り方も多様性があります。例えば、やさしい心強い心弱い心などいろいろです。これらはいろいろな組み合わせがあり、ケースバイケースに応じて使い分けてこそ心が生きてきます。このことを子育ての中で教えられるのは唯一親であると考えます。そのためには親は何をどのようにしなければならないのでしょうか。
心というものが、目に見えないものである限り、教え方や育て方に一定の決まった規則はありません。大切なことは、子供をありのままに見る姿勢づくりです。その子にとってどんな生き方が合っているのか幸福なのか絶えず思いやることです。他の子供より勉強ができるからと言って幸福につながるとは限りません。また、みんなと同じであれば安心と考えることも幸福とは言い切れません。親が考える幸福と子供のそれとは全く違うかもしれませんが、それでもいいと思います。
親はアドバイザーに徹する
大切な心がけは、あくまでアドバイスをする立場であり続けることです。子供は親の所有物ではありません。このことを認識されない親の何と多いことでしょう。親好みの子供に育てる権利はどの親にも与えられていません。だから強制的な押し付けではなくあくまでも助言なのです。主体は子供ですから、子供自身が自分の力で考え納得する方向に導かなければならないのです。
時には譲歩する習慣が親のゆとりをつくる
そのためにも、まずは親の頭の切り替えが求められます。他の良い手本のまねをすることはいいと思いますが、常に自分の家庭や子供にそのまねがふさわしいかどうかをチェックする習慣は忘れないで下さい。親がいいと思うやり方を時には子供が嫌がったり拒むこともあると思いますが、その場合も子供の言い分が正しいと思えたら親はそれを素直に認めることが大切です。
親は、できるだけ柔軟な心を持つべきなのです。このような心構えで子供と接しながら子育てをすれば、わが子の本来の実力が見えてきます。そして、足りない部分を補うこともできるのです。
子育ては+-÷×の繰り返し
子育ては、決して一筋縄では対処できません。親子の関係は、足したり引いたり、時には割ったりあるいは掛けてみたり、そして答えが合っていたり間違ったりを繰り返しながら形成されるものであると確信します。