「親子の絆」は人格形成に大きな影響を与えます。だからこそ、親子は互いの立場を尊重し合い、和やかな雰囲気を作ることが必要です。私が伝えたいのは、人間の成長は「木」に例えられるとしたら、どこに根を下ろすかが決め手だということです。それは家庭しかありません。家庭以外にはありません。
家庭環境は人生の土台づくりに最適な場所である
家庭環境とは広い意味で使われる言葉ですが、人が育つ土壌として考えてみれば、その土壌(家庭)がどんな状態(子育てや教育の方法)でどんな養分(愛情や価値観)を吸収しながら育っていくのか、そしてその後の生活や人生にどんな影響を与えていくのかということの土台づくりになります。
子供の育ち方は家庭という土壌の状態に左右される
私は長い指導の経験から、子供たちの受験という面からその子の家庭の土壌をだいたい推測できるようになりました。子供が育つのに必要な養分が豊富で成長が望めるような家庭、あるいは乾いて水分が足りなくて潤いのないような家庭など。
特に後者の土壌(家庭)の場合はさらに心配なことがあります。両親は仲がいいのか、子供が悩みやストレスを持っている時に気楽に話せる雰囲気なのか、そして一番大切なことは、親が子供に対して、勉強だけでなく将来の夢や希望を聞いたりどんな大人になりたいかなどを話し合える家族の時間があるのかと疑問に思います。
なぜなら子供たちの中には実際にこのような家庭環境が多いからです。両親の子育てに対する考え方が合っていなかったり、子育てに真剣に取り組んでいなかったりする例が意外と多いのです。
子育ての悩みは家庭環境の改善が答えである
日々の仕事の中で、子供はもちろん親との話し合いでも家庭の大小いろいろな問題や子育ての悩みなどを相談されますが、よく聞いているとその家庭の問題の原因が見えてきます。その原因が分かればもちろん解決しなければなりません。両親が協力して最善を尽くしながら家庭環境の改善に努める必要があります。つまり、根っこである土壌を整えるということです。そして、家族みんなが快適に過ごせる環境の中で、子供に親の価値観を強要するのではなく、子供の自発性を応援するためにできるだけ後ろから支えてあげるような励ましの言葉をかけることが大事だと思います。
親自身「親力」アップの努力を怠らない
子供にとって家庭という土壌が十分整備されていなければ子供が素直に育つことは難しいです。そして、ストレスなく思いっきり子供らしくのびのびと過ごすこともできません。このような不十分な環境では友達関係でも他人の痛みを理解できるような人間には育ちません。
親としてわが子に良いと思っていろいろと「~しなさい」と命令する前に、親自身も子供のために「親力」アップに必要なことをやらなければならないのです。
親の子育ての本音は学力向上より豊かな人間性である
やはり時代がどう変わろうと、親が本音で子供の成長に期待することは人としての内面であると信じます。人を思いやることができる優しい人、人の役に立って人の喜びや悲しみを分かち合える人、そして慕われ尊敬される人になって欲しいことであると思います。つまり、いい学校に入ることは本心ではないかもしれません。親自身が本当に心で願っている子供の幸せは勉強のことより別のところにあるのではと感じます。
受験は一つの通過点であり家庭環境改善の機会
何度も言ってきましたが、親はわが子の受験はゴールではなくて一つの段階にすぎないことをはっきりと認識することです。受験という機会を家庭環境改善のチャンスととらえ、親も子もお互いの立場をしっかりと把握し、それぞれの役割というものを理解し思いやることが重要でしょう。
人が人間らしい人として育つ根っこという場所の良し悪しは、その土壌つまり家庭環境にかかっているのです。
家庭環境は親子関係の理想をも決める
大切な我が子が、いい学校からいい会社に就職し出世の道を歩む、ところが仕事が忙しくて長い間親に会えない挨拶の電話すらなければ、親は安否を心配するばかりでまた子供時代に戻ってしまいます。しかし、結果として学力に見合った進学や就職ができたが、時間的なゆとりがあり親子の関係はとても良好で特に心配することもない。
実際、どちらの親子が望ましいと思いますかということなのです。もちろん両方のいいところを持つ方が理想的であり幸せな親子関係であることは言うまでもありませんが、現実としてそういう例は少ないと思います。やはり、このような結果になることは、子供時代の親の家庭環境づくりの成果であり、どれだけ「親力」アップに努めたのかという証拠ではないでしょうか。