子育ての本質を知らなかったら人生の半分は無駄にしていた

 長い間、教育の現場に接していると、親から実にいろいろな相談を受けることが多々あります。親が親である限り子育てに関する悩みは尽きないものであると思い知らされます。

 子供の学力は親自身の学歴より子育ての工夫による

 昔、小学校高学年の男子の母親から、子供の成績が悪く一向に伸びないということについて相談がありました。懇談開始早々、親自身が学歴がなく頭が悪いので子供ばかりを一方的に責めることもできないという内容でした。今まで辛くふっ切れない思いで子育てをされてきたのであろうと推察しました。

 私の子育てについての基本的な考えの一つは、親の工夫次第で子供の実力は大きく伸びるということです。そして、現に、そんな生徒をたくさん指導してきました。つまり、親自身の頭の良し悪しや学歴などは一切関係がないことを強調したいと思います。学校時代、成績が悪かったからなどの理由で子育てに自信がもてない親も多いと思われますが、そのような子育ての悩みは全くご心配無用です。

 子育ては生きるための知恵の応用

 子を持つ親の年齢になれば、みんなが生きるための知恵を授かっています。この知恵というものは、学歴などに無関係で、親として自らを成長させながら得た一種の財産と言っていいと思います。大切なことは、その知恵を現実の子育てにどのように応用して行くのかということです。学歴がなくても恥ずかしいなどということはありません。世の中には、大学を出ても人に憎まれ嫌われる人間はたくさんいるのです。中には、罪を犯す人さえいます。学歴があることが完全ではありません。 

 子育ては親の誇りであり自信である

 子供には、親が自分の言葉で自分の考えていることを伝えて下さい。叱るときは躊躇せずに叱る、褒めるときは笑顔いっぱいで大いに褒めてやって下さい。子供を育てていることそれ自体が、親としての誇りであり自信であるはずなのです。

 親子の信頼と尊敬は親の信念がつくる

 人は、自分の考えに自信を持てないほど、他人の言葉にすがりつきたいものです。子育ての本を読んだり、著名人の話を聞きに遠方まで出かけたりしますが、生かされることは少ないものです。それは、他人の考えでしかないからです。子供を他人が言ったようにさせようと仕向けてもどれだけの説得力があるのでしょうか。子供が聞きたい知りたいのは、親の信じる考えであり他人の言葉ではないのです。親がわが子のために必死に考えて信念としていることを知りたいのです。他人の言葉を代用している限り、親と子供の間に信頼と尊敬の気持ちが生まれることはありません。立派な言葉でなくてもいいんです。難しい言葉を並べなくてもいいんです。適切な言葉が見つからなければ身振り手振りでも十分なのです。気持ちを込めればいいんです。どうすればわが子を幸せにできるのか、親として何をするべきなのか、自分で考えることが大切なのではないでしょうか。

 子育ての本質は明るく楽しむ

 これらの私の経験上の提言が実行が困難と感じられるならそれは今までこのような提言の内容が思いつかなかったというだけのことでしょう。親が子を思う気持ちこそが、子供の心に強く訴え子供の力を引き出すのです。他人の言葉より、親が考え工夫した言葉や行動の方が、より効果的であると思います。子供の教育は簡単ではありません。確かに難しいものです。しかし、難しいと考えれば考えるほど辛く苦しいものになってしまいます。もっと気楽にもっと明るく子育てを楽しむ方が親も子も幸福なのではないでしょうか。

 子供の苦境は可能な限り冷静に見守る

 また、受験そのものが子供の人生において初めての大きな試練であることは周知の事実です。その試練を迎えた時こそ親自身の言葉でアドバイスしてやって下さい。親は子供がこのような場面に直面した時、どんな姿勢でいればいいのでしょうか。子供に苦労をさせたくないという親の願いが時として逆効果になることがあるので注意が必要です。子供が必死になって戦っている時こそ、親は感情を抑えつつ冷静な目で子供を見つめなければなりません。

 親は子を早めに突き放す

 確かに、わかっている苦労をわざわざさせることはないと考える親もいると思いますが、親はいつまでも子供の力になれないのです。いつかは子供は自立しなければなりません。親が子を突き放すのは早い方がいいのではないかと思います。これが私の結論です。

 どんなに親が頑張っても心配しても、子供の頭の中や心の中にまで入り込むことはできません。想像してみて下さい。受験会場で悪戦苦闘するわが子の姿を。どんな親でも手助けすることはできないのです。そうであれば、見ているだけでいいのではないでしょうか。実際、心の中で手を合わせて祈ってあげるくらいしかできないのです。

 子供の受験を見守ることは親に課せられた試練である

 毎年の光景ですが、受験会場に付き添って来る親の姿が見られます。子を思う気持ちの表れです。しかし、厳密に言うと私にはあまり好ましいこととは思えません。付き添って励ますことは、家を出る前にすんでいるべきなのです。試験の当日は、明るく笑顔で送り出してやるだけでいいのではないでしょうか。親として受験に向かう子供に精一杯のするべきことをやった親だけが、冷静に成り行きを見守ることができると思います。

 要するに、子供自身が自分の実力をどれくらい発揮できるかということが一番重要なのです。確かに、見ているだけという態度は辛いと思われますが、このことは親に課せられた試練でもあります。

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