テストまであと3日。リビングでは子どもがスマホを片手に動画を見ています。机の上のワークは、先週から同じページのままです。
「テスト前でしょ、勉強したの?」と聞くと、「今やろうと思ってた」。この一言で、つい声が大きくなってしまう。言い過ぎたと後悔しながら、扉の閉まった子ども部屋の前で立ち尽くす。そんな経験はありませんか。
実は、テスト前に勉強しない中学生の多くは、やる気がないのではありません。「どこから手をつければいいかわからない」「やっても点が取れないかもしれないのが怖い」といった理由で、動けなくなっていることがよくあります。この状態で叱ると、勉強が嫌なものとして記憶に残り、次のテストでさらに動けなくなりがちです。
この記事では、叱らずに、今日から家庭で試せる7つの対応を紹介します。声かけ例、物の使い方、時間の区切り方まで具体的に書きました。コピーして使えるチェックリストも用意しています。全部やる必要はありません。1つ選んで、今日から試してみてください。
なぜテスト前でも勉強しないのか?叱る前に知っておきたい3つの原因
対応を変える前に、子どもが動けない理由を整理します。原因によって、効く対応が変わるためです。
**原因①:範囲が見えていない(どこから何をやればいいかわからない)**
テスト範囲が頭の中でぼんやりしていると、脳は「大変そう」と感じて避けようとします。大人でも、量のわからない仕事は後回しにしたくなります。
**原因②:取りかかりのハードルが高い**
「勉強する」を「机に座って1時間集中する」とイメージしていると、始める前から疲れてしまいます。
**原因③:失敗したくない気持ちが強い**
やって点が取れなければ「自分は頭が悪い」と感じてしまう。それなら最初からやらないほうが傷つかない、という心理が働くことがあります。思春期の子どもほど、この傾向が出やすくなります。
この3つを頭に置くと、「やる気を出させる」ではなく「動きやすい状況をつくる」という発想に切り替えられます。以下の7つは、すべてこの考え方に基づいています。
対応① テスト範囲を「ページ数」で見える化する(付箋を使う方法)
最初にやるのは、勉強ではなく「数える」ことです。
**やり方**
1. 学校のワークや教科書を、親子でテーブルに並べる。
2. テスト範囲のページに、付箋を1枚ずつ貼る(1ページ=1枚)。
3. 付箋の枚数を数えて、紙に書く。
「数学ワーク12ページ、英語8ページ、理科10ページ」のように数字になると、子どもの頭の中の漠然とした不安が小さくなります。
**声かけ例①**
「テスト範囲って、全部で何ページあるのか一緒に数えてみない?付箋を貼るだけでいいよ」
ここで「やりなさい」とは言いません。親は貼る作業を手伝うだけです。
対応② 「終わったら付箋をはがす」進み具合の見える化
付箋は貼って終わりではありません。1ページ終わるごとに、本人が付箋をはがします。
**この方法が効く理由**
– 時間ではなく「減っていくもの」で進み具合がわかるので、達成感を感じやすい。
– 残りの枚数が見えるので、「あとこれだけ」と思える。
– はがす動作そのものが小さなごほうびになる。
**声かけ例②**
「今日は何枚はがせそう?3枚でも十分だよ」
目標は少なめに設定してください。「もう少しできそう」と思える量で終わるほうが、翌日も動きやすくなります。
対応③ 「机に向かう前」の動作を決める(始めの5分ルール)
勉強が始まらない最大の壁は、最初の一歩です。そこで、始め方を動作レベルまで小さくします。
**始めの5分ルールの例**
– 冷蔵庫から飲み物を取ってきて、机に置く。
– ワークを開いて、今日やるページに指を置く。
– キッチンタイマーを5分にセットする。
– 1問目だけ解く。
「5分たったらやめてもいい」と最初に約束しておくのがコツです。実際には、始めてしまえばそのまま続けられることも多いのですが、やめてもよいという安心感があるから始められます。
**声かけ例③**
「5分だけタイマーかけてみよう。5分たったらやめていいからね」
スマホのタイマーではなく、キッチンタイマーや100円ショップの砂時計など、勉強専用の物を使うのがおすすめです。スマホを手に取ると、通知やゲームにつられやすいためです。
対応④ スマホは「禁止」ではなく「置き場所の約束」にする
「スマホ禁止!」と言うと反発を招きやすく、隠れて触るようになることもあります。禁止するより、置き場所を一緒に決めるほうが続きます。
**進め方**
1. テスト2週間前に、親子で話し合う時間をつくる(夕食後の10分でOK)。
2. 「勉強中だけスマホをここに置く」場所を決める(リビングの充電スタンドなど)。
3. 置く時間帯を決める(例:19時〜20時)。
4. 休憩時間には自由に触ってよいと決める。
**声かけ例④**
「勉強中、スマホはどこに置くのがいいと思う?あなたが決めていいよ」
自分で決めたルールは、親に決められたルールよりも守りやすくなります。親も同じ時間にテレビを消すなど、できる範囲で協力すると効果が上がります。
対応⑤ 机から離れて暗記する(歩きながら・貼り出す・声に出す)
「机に座らないと勉強にならない」というのは思い込みです。暗記科目は、体を動かしたほうが取り組みやすい子もいます。
**家でできる体を使った暗記法**
– **廊下の壁に貼る:** 英単語や歴史の年号を紙に書いて貼り、通るたびに見る。
– **お風呂に貼る:** 防水の暗記シートを湯船で眺める。
– **歩きながら一問一答:** 親が問題を出し、子どもが家の中を歩きながら答える。
– **階段ごとに1問:** 1段上がるごとに1つ思い出す。
**声かけ例⑤**
「ちょっとクイズ出していい?10問だけ。歩きながらでいいよ」
正解したら「おお、よく覚えてるね」と事実を伝えるだけで十分です。間違えたときは、責めずに「惜しい、もう一回聞くね」と返してください。
対応⑥ 親が「生徒役」になって教えてもらう
中学生は、親に教わるより、親に教えるほうが動きやすいことがあります。人に説明すると、自分が理解できていない部分が見えてくるからです。
**やり方**
– 親は「その単元、全然わからないから教えて」と頼む。
– 子どもが説明している間、親は途中で口を挟まず、うなずいてメモを取る。
– 説明が止まったところが、復習すべきポイントになる。
**声かけ例⑥**
「理科の電流のところ、お母さん忘れちゃったんだよね。3分だけ教えてくれない?」
親が正解を知っていても、知らないふりをする必要はありません。「そういう考え方なんだね」と素直に感心するだけで十分です。そのうえで説明に詰まった箇所があれば、「そこ、あとでもう一回見ておくといいかもね」と軽く添えます。
対応⑦ 勉強時間ではなく「やった量」と「やり方」をほめる
テスト前に勉強しない子に「何時間やったの?」と聞くと、答えづらくなります。時間ではなく、行動をほめます。
**ほめ方の具体例**
– 「今日は付箋が3枚減ったね」
– 「ワークを開くところまで、自分でできたね」
– 「間違えたところに印をつけてるの、いいやり方だね」
**避けたほうがよい言葉**
– 「やればできるのに」
– 「だから言ったでしょ」
– 「前もそうだったよね」
結果や過去の失敗に触れる言葉は、焦りを強めて逆効果になりがちです。
**声かけ例⑦**
「今日はここまで進めたんだね。ちゃんと前に進んでるよ」
言いたくなる一言を言い換える早見表
つい口から出てしまう言葉を、そのまま責めずに言い換えてみましょう。
| つい言ってしまう言葉 | 言い換え例 |
| 勉強しなさい | 今日、何ページならできそう? |
| テスト前なのに何してるの | テスト範囲、一緒に数えてみる? |
| スマホやめなさい | 休憩はあと何分にしようか |
| なんでやらないの | 何が一番やりにくい? |
| 前もそうだったでしょ | 今回はどうしたらやりやすいかな |
「なんでやらないの」は、責められていると感じさせやすい言葉です。「何が一番やりにくい?」と聞くと、原因を話してもらいやすくなります。
テストまでの流れ別・親の動き方
テストまでの時期によって、親の関わり方も変えると効果的です。
**2週間前**
– 付箋でテスト範囲を見える化する。
– スマホの置き場所を話し合う。
**1週間前**
– 1日の目標ページ数を、子どもが決める。
– 暗記系を、体を動かす方法に切り替える。
**3日前**
– 親が「生徒役」になって教えてもらう。
– 間違えた問題の見直しを、5分だけ一緒にする。
**前日**
– 新しいことを詰め込まず、軽い復習にとどめる。
– 睡眠時間を確保できるよう、夜食や入浴の時間を調整する。
直前に慌てて詰め込むより、睡眠を削らないほうが当日の力を出しやすくなります。
【コピー用】テスト前・親のチェックリスト
ブックマークして、テスト前に見返してください。印刷して冷蔵庫に貼るのもおすすめです。
**□ テスト2週間前までに**
– □ テスト範囲のページに付箋を貼った(親子で一緒に)
– □ 範囲の総ページ数を紙に書いた
– □ スマホの置き場所を親子で決めた
– □ キッチンタイマーか砂時計を用意した
**□ 毎日の声かけ**
– □ 「勉強しなさい」を言わずに、1日1回「今日は何枚はがせそう?」と聞いた
– □ ほめるときは、時間ではなく行動を言葉にした
– □ 「だから言ったでしょ」「前も同じだった」を使わなかった
**□ 1週間前〜前日**
– □ 暗記を、廊下や階段など机以外でも試した
– □ 親が生徒役になって、子どもに3分教えてもらった
– □ 前日は睡眠時間を優先した
全部できなくても問題ありません。半分できていれば十分です。
よくある質問
**Q. 声をかけても全く動かないときは?**
A. その日は無理に進めず、「付箋を数える」だけで終わりにしても構いません。動けない日があるのは自然なことです。翌日、5分だけ試してください。
**Q. ゲームばかりしていて、そもそも話を聞いてくれません**
A. 話し合いのタイミングを工夫します。ゲーム中ではなく、食後や気分の落ち着いているときに「少し相談したいことがある」と切り出すと、聞いてもらいやすくなります。
**Q. 点数が悪かったとき、どう声をかければいい?**
A. 点数には触れず、まず「テストお疲れさま」と伝えます。そのうえで、「やってみてよかったことは?」「次、変えたいことは?」と、子ども自身に振り返ってもらってください。
**Q. 塾に行かせたほうがいいですか?**
A. 塾は選択肢の1つですが、家庭での取りかかりやすさが整っていないと、塾に行っても動けないことがあります。まずは今回紹介した方法を、1〜2回のテストで試してみてください。
まとめ:叱らなくても、子どもが動ける状況はつくれる
テスト前に勉強しない中学生は、やる気がないのではなく、動き出すきっかけをつかめていないだけのことが少なくありません。
今回の7つを振り返ります。
1. 付箋でテスト範囲を見える化する
2. 終わったページの付箋をはがして、進み具合を実感する
3. 始めの5分ルールで、最初のハードルを下げる
4. スマホは禁止ではなく、置き場所を約束する
5. 机から離れて、体を動かしながら暗記する
6. 親が生徒役になって、教えてもらう
7. 時間ではなく、やった量とやり方をほめる
最初の一歩は、**今夜、付箋とワークをテーブルに出して、一緒にページを数えること**です。「勉強しなさい」と言わなくても、子どもが自分で動き出す場面は、少しずつ増えていきます。
