「宿題やってるはずなのに、気づくと窓の外を眺めてる…」
「勉強机に向かって30分、まだ1ページも進んでない…」
お子さんの勉強中の様子を見て、こんな心配をされていませんか?
実は「勉強中にぼーっとしてしまう」という悩みは、多くの保護者の方が抱えている共通の課題です。私自身、教育現場で15年以上子どもたちと関わってきましたが、この相談は本当に多く寄せられます。
大切なのは「うちの子だけ?」と不安になることではなく、**なぜぼーっとしてしまうのか、その原因を理解すること**。そして、お子さんに合った対策を見つけることです。
この記事では、勉強中にぼーっとしてしまう子どもの背景にある原因と、今日からご家庭で実践できる具体的な対策を5つご紹介します。お子さんの集中力を少しずつ育てていくヒントが見つかるはずです。
勉強中に「ぼーっとしてしまう」のは悪いこと?
まず知っていただきたいのは、**ぼーっとすること自体は決して悪いことではない**ということです。
脳科学の研究によると、人間の脳は「集中モード」と「デフォルトモード(ぼんやりモード)」を切り替えながら活動しています。実は、ぼんやりしている時間は、脳が情報を整理したり、創造的なアイデアを生み出したりする大切な時間なのです。
問題なのは、**勉強すべき時間にコントロールできずにぼーっとしてしまい、学習が進まないこと**。つまり、「集中とリラックスの切り替えができていない状態」が課題なのです。
ですから、お子さんを責める必要はありません。むしろ「どうすれば上手に切り替えられるか」を一緒に考えていくスタンスが大切です。
ぼーっとしてしまう5つの主な原因
1. 睡眠不足・疲労の蓄積
最も多い原因が、実は睡眠不足です。小学生なら9〜11時間、中学生でも8〜10時間の睡眠が理想とされています。
睡眠が不足すると、脳の前頭前野(集中力や判断力を司る部分)の働きが低下します。結果として、勉強しようとしてもすぐに意識が散漫になり、ぼーっとしてしまうのです。
また、習い事や部活動で身体的に疲れている場合も、脳のエネルギーが足りず集中できません。
2. 勉強内容が「難しすぎる」または「簡単すぎる」
お子さんの学力レベルと勉強内容が合っていない場合も、ぼーっとしやすくなります。
**難しすぎる場合**:脳が「これは無理だ」と判断し、防衛反応として注意を他に向けてしまいます。
**簡単すぎる場合**:脳が刺激を感じず、「この作業は意識しなくてもできる」と判断し、自動的にデフォルトモードに入ってしまいます。
勉強が「ちょうどいい難易度」である時、人は最も集中できるのです。
3. 学習環境の問題
勉強机の周りに気が散るものがあると、無意識にそちらに注意が向いてしまいます。
– スマホやゲーム機が視界に入る
– テレビの音が聞こえる
– 兄弟の遊ぶ声がする
– 机の上が散らかっている
人間の脳は、新しい刺激や変化に自動的に反応するようにできています。静かで整理された環境でないと、集中を維持するのは大人でも難しいのです。
4. 目標や意味が見えていない
「なぜこの勉強をするのか」が分からないと、脳はその活動に価値を見出せず、モチベーションが湧きません。
特に、親に言われて仕方なく机に向かっている場合、形だけは勉強していても、脳は積極的に働いていない状態になりがちです。
5. 栄養不足・血糖値の問題
実は見落とされがちなのが、栄養面の問題です。
朝食を抜いていたり、糖質ばかりに偏った食事をしていたりすると、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足したり、血糖値が乱高下したりします。
すると、集中力が続かず、ぼんやりしやすくなるのです。
今日からできる5つの具体的対策
対策1:生活リズムを整える「睡眠ファースト戦略」
まず最優先で取り組んでいただきたいのが、睡眠時間の確保です。
**具体的なアクション**:
– 就寝時刻を決めて、毎日同じ時間に寝る習慣をつける
– 寝る1時間前からスマホ・タブレットを見ない(ブルーライト対策)
– 夕食後の仮眠は避ける
「勉強時間を増やさなきゃ」と夜更かしさせるより、しっかり寝た方が翌日の学習効率は格段に上がります。
週末に「寝だめ」をするより、毎日コンスタントに十分な睡眠を取ることが重要です。
対策2:「25分集中+5分休憩」のポモドーロテクニック
子どもの集中力は、年齢×1分程度が限界と言われています。小学3年生なら約10分、中学生でも15〜20分程度です。
そこでおすすめなのが「ポモドーロテクニック」を子ども向けにアレンジした方法です。
**やり方**:
1. タイマーを25分(低学年なら15分)にセット
2. その時間だけ集中して勉強
3. タイマーが鳴ったら5分間しっかり休憩
4. これを2〜3セット繰り返す
ポイントは「休憩時間も勉強時間と同じくらい大切」だと認識すること。メリハリをつけることで、脳が「今は集中する時間」と認識しやすくなります。
対策3:学習環境を「集中仕様」に整える
勉強する場所を、集中しやすい環境に変えましょう。
**チェックリスト**:
– [ ] 勉強机の上に置くのは、今使う教材だけ
– [ ] スマホは別の部屋に置くか、保護者が預かる
– [ ] 視界に入る場所にゲームやマンガを置かない
– [ ] 適度な明るさの照明(暗すぎると眠くなる)
– [ ] 静かすぎる場合は、軽いクラシック音楽やホワイトノイズも効果的
「勉強する場所=集中する場所」という脳の条件付けができると、自然と切り替えができるようになります。
対策4:「スモールステップ」で達成感を積み重ねる
大きな目標だけでは、ゴールが遠すぎてやる気が続きません。
**実践方法**:
– 「数学の問題集1ページ終わらせる」ではなく「まず3問解く」
– 「漢字10個覚える」ではなく「まず3個書いてみる」
– 小さな課題をクリアするたびに、チェックマークをつける
達成感が脳の報酬系を刺激し、「もう少しやってみよう」という意欲につながります。
また、お子さん自身に「今日は何からやる?」と選択させることも効果的。自分で決めたことには、より責任感とやる気が生まれます。
対策5:脳のエネルギー補給「おやつ戦略」
勉強前後の栄養補給も、集中力維持には重要です。
**おすすめの補食**:
– ナッツ類(アーモンド、くるみ):脳の働きを助ける良質な脂質
– バナナ:素早くエネルギーになり、セロトニン生成も助ける
– チーズ、ヨーグルト:タンパク質で持続的なエネルギー
– 少量のチョコレート:集中力を高める効果(食べすぎ注意)
避けたいのは、スナック菓子や清涼飲料水など、血糖値を急激に上げ下げするもの。一時的に元気になった後、逆にぼんやりしやすくなります。
「ぼーっとしてしまう」を見守る保護者の心構え
対策を実践する上で、保護者の方に知っておいていただきたいことがあります。
すぐに結果を求めない
習慣が変わるには、最低でも3週間かかると言われています。今日対策を始めて、明日劇的に変わることはありません。
「また、ぼーっとしてる…」と思っても、すぐに叱らず、「今日は昨日より5分長く集中できたね」など、小さな変化を見つけて認めてあげてください。
比較しない
「お兄ちゃんは集中できるのに」「○○ちゃんは勉強好きなのに」という比較は逆効果です。
お子さん一人ひとり、脳の発達段階も得意なことも違います。その子なりの成長を見守る姿勢が大切です。
「できていること」に目を向ける
「ぼーっとしてしまう」という「できていないこと」ばかりに注目すると、お子さんも保護者の方も疲れてしまいます。
「今日は自分から机に向かえたね」「途中で休憩しながらでも、最後まで終わらせたね」など、できていることを言語化して伝えましょう。
まとめ
勉強中にぼーっとしてしまうお子さんへの対応、いかがでしたでしょうか。
**この記事のポイント**をまとめます:
✓ ぼーっとすること自体は悪くない。問題は「切り替えができないこと」
✓ 原因は睡眠・難易度・環境・目標・栄養など、複合的な場合が多い
✓ 今日からできる対策は、まず「睡眠」と「環境整備」から
✓ 小さな達成を積み重ね、脳に「集中は楽しい」と学習させる
✓ 保護者は結果より過程を、比較より成長を見守る
大切なのは、お子さんを「変えよう」とするのではなく、お子さんが自然と集中しやすい環境や仕組みを「整えてあげる」ことです。
今日ご紹介した5つの対策から、できそうなものを1つだけでも試してみてください。小さな一歩が、お子さんの学習習慣を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
お子さんの成長を見守る保護者の方々に、この記事が少しでも役立つことを願っています。焦らず、お子さんのペースに寄り添いながら、一緒に歩んでいってくださいね。

