「あれ、この子、話すときはちゃんとしてるのに、書くとなんでこんなに雑になるんだろう」
そう感じたことはないでしょうか。定期テストの選択問題や漢字は取れているのに、記述問題になると急に点数が落ちる。答案を見返すと、文末がねじれていたり、主語と述語が噛み合っていなかったり。
これは、実は多くの家庭で見かける「よくあるパターン」です。そして原因の多くは、書く力そのものよりも、普段の言葉遣いのクセにあります。
この記事では、記述問題で点数を落としがちな中学生に共通する言葉遣いの特徴と、家庭の会話でそれをどう直していけばいいのかを、具体的に解説していきます。
なぜ記述問題だけ点数が落ちるのか
まず整理しておきたいのは、記述問題と選択問題では、求められている力がまったく違うという点です。
選択問題は「正しいものを見つける」作業。記述問題は「自分の考えを、正しい日本語で組み立てて出す」作業です。後者のほうが圧倒的にハードルが高いんです。
ここで重要なのが、記述で使う日本語と、普段話している日本語は、実はかなり違うということです。
たとえば、こんな会話、家庭でよくありませんか。
「今日学校どうだった?」
「別に。普通」
「宿題やった?」
「まだ。てか今やろうと思ってた」
この「別に」「てか」「なんか」といった言葉、話し言葉としては何の問題もありません。でも、これが記述問題の答案にそのまま出てしまう子が、実はかなり多いんです。
「筆者はなんか嬉しかったから、みんなに教えたって感じがする」
こういう答案、採点者からすると「主観の羅列」に見えてしまいます。減点対象になりやすい表現です。同じ内容でも、「筆者は嬉しさを抑えられず、思わずみんなに伝えた」と書ければ、印象は大きく変わります。
つまり、記述問題の点数が伸び悩む原因の一つは、話し言葉のクセが、そのまま書き言葉に出てしまっていることなんです。
家庭の会話に潜む「言葉の型」のクセ
では、なぜ話し言葉のクセが抜けないのか。ここが本題です。
子どもは、家庭での会話を通して「言葉の型」を学んでいます。つまり、親が普段使っている言葉遣いのパターンが、そのまま子どもの言葉の土台になっているケースが多いんです。
よくあるのが、次のようなパターンです。
– 主語を省略する会話が多い(「もうやったの?」「まだ?」)
– 感情語だけで会話が終わる(「やばい」「うざい」「めんどい」)
– 結論だけを言って理由を説明しない(「だから無理」「そういうもん」)
これ自体は、日常会話としては全く問題ありません。むしろ会話のスピード感を保つには自然なことです。
ただ、こうした会話だけで育った子は、「理由を説明する」「主語と述語をきちんと結びつける」という練習の機会が、家庭の中でどうしても少なくなってしまいます。
学校の授業だけでこの力を伸ばすのは、正直かなり時間がかかります。週に数回の国語の授業だけでは、日常的に染みついた言葉のクセを直すには足りないんです。
だからこそ、家庭の会話そのものを、少しだけ意識して変えていく必要があります。
親がやりがちなNG対応
ここで、多くの親がやってしまいがちな対応を挙げておきます。
一つ目は、答案の言葉遣いだけを直させる対応です。
「この書き方はダメ、こう書きなさい」とテストの答案を直させても、その場では直っても、次のテストでは元に戻ってしまう。これは、言葉遣いが「知識」ではなく「習慣」だからです。習慣は、一回の指導では変わりません。
二つ目は、「正しい日本語で話しなさい」と抽象的に注意する対応です。
「ちゃんと話しなさい」と言われても、子どもからすると、どこがちゃんとしていないのかがわからない。抽象的な注意は、子どもにとって具体的な行動指針にならないんです。
三つ目は、逆に、子どもの話し言葉に対して親自身も同じレベルで返してしまうことです。
「宿題やった?」「まだ」「じゃあ早くやんなさい」
これだと、主語も理由も省略された会話が続くだけで、言葉を整える機会が生まれません。
家庭でできる実践方法
ここからは、実際に家庭でできることを紹介します。特別な教材や時間を用意する必要はありません。普段の会話の中で、少しだけ意識するだけで変わっていきます。
1. 「なぜ」を一言添えて聞く
子どもが「別に」「普通」で答えてきたら、そこで終わらせず、もう一歩だけ聞いてみてください。
「別に」→「別にってことは、特に何もなかったってこと?それとも言いたくない感じ?」
この一言があるだけで、子どもは理由や状況を言葉にする練習を、無意識のうちにすることになります。
2. 主語を省略した会話に、あえて主語を足して返す
子ども:「まだやってない」
親:「宿題、まだやってないんだね。何時からやる予定?」
このように、子どもが省略した主語や対象を、親が言葉にして返してあげる。これを続けると、主語と述語をセットで話すという感覚が、少しずつ子どもの中に育っていきます。
3. 感情語のあとに「どんな風に」を添える
「やばい」「うざい」で終わる会話に対して、「やばいって、どんな感じでやばかったの?」と聞いてみる。
最初は面倒くさがられるかもしれません。でも、感情を言葉で説明する練習は、記述問題で求められる「心情描写の言い換え」に直結します。
4. 答案を一緒に読んで、話し言葉だけを指摘する
テストが返ってきたとき、点数の話ばかりにせず、答案の言葉遣いだけを一緒に確認してみてください。
「ここ、『なんか』って書いてるけど、これ他の言葉に言い換えられそう?」
内容の正しさは横に置いて、言葉遣いだけをピンポイントで見る。これだけで、子ども自身が自分の書き方の癖に気づくきっかけになります。
よくある失敗例と、その対処法
ここで、実践する上でよくある失敗パターンも共有しておきます。
失敗例その一は、質問攻めにしてしまうことです。「なぜ」「どんな風に」を毎回全部の会話に使うと、子どもは詰問されているように感じてしまいます。対処法としては、1日1回、気になった発言に対してだけ使う、くらいのペースで十分です。
失敗例その二は、直した言葉遣いをその場で評価してしまうことです。「今の言い方、良くなったね」と褒めすぎると、子どもが言葉遣いを意識しすぎて、逆に会話がぎこちなくなることがあります。評価はせず、自然に聞き返すだけにとどめておくのがちょうどいいバランスです。
失敗例その三は、テスト前だけ集中してやろうとすることです。言葉遣いは習慣なので、テスト前の数日だけ意識しても、本番の答案には反映されにくいです。日常の会話の中で、数週間から数ヶ月かけて、じわじわ変えていくものだと捉えておくと、期待しすぎずに続けられます。
失敗例その四は、親自身の言葉遣いを見直さずに、子どもだけを直そうとすることです。子どもは、親の会話の型をそのまま吸収しています。親が「別に」「まあいいや」で会話を終わらせている家庭で、子どもだけに正確な言葉遣いを求めるのは、少し無理があります。まずは親自身が、理由や状況を一言添える会話を、意識的にしてみることが近道です。
まとめ
記述問題で点数が伸びない背景には、家庭の会話の中で染みついた言葉遣いのクセが関係していることが多いです。
これは、子どもの能力の問題ではなく、日常の言葉の習慣の問題です。だからこそ、家庭での会話を少し変えるだけで、じわじわと改善していく余地があります。
今日からできることは、たった一つでいいです。子どもが「別に」「まだ」だけで会話を終わらせようとしたときに、「なぜ」か「どんな風に」を、一言だけ添えて聞き返してみてください。
その積み重ねが、数ヶ月後の記述問題の答案に、確実に表れてきます。
