中3の秋になっても志望校が決まらない。周りの友達はどんどん志望校を固めていくのに、うちの子だけ「まだわからない」と言っている。そんな状況に焦りを感じている親御さんは、決して少なくありません。
でも、志望校が決まらないのは、子供にやる気がないからではないことがほとんどです。多くの場合、「自分が本当は何をしたいのか」がまだ言葉になっていないだけ。だとすれば親にできることは、子供を急かすことではなく、子供の頭の中にあるものを一緒に整理してあげることです。
この記事では、子供の「やりたい事」を引き出す会話の具体的なコツと、家庭ですぐに試せる実践方法をお伝えします。
なぜ中3になっても志望校が決まらないのか
まず考えたいのは、「なぜ決まらないのか」という部分です。
多くの家庭では、志望校選びが偏差値や通学時間、周りの評判といった「外側の情報」だけで進んでいきます。もちろんこれらは大事な判断材料ですが、そこに子供自身の「こうありたい」という気持ちが入っていないと、いつまでも決め手に欠けてしまいます。
中学生という年齢は、将来のイメージがまだぼんやりしている時期でもあります。「将来何になりたい?」と聞かれても、具体的なビジョンを持っている子の方が少数派です。これは決して珍しいことではなく、自分の興味や関心を言葉にする経験自体が、まだ十分に積めていないだけなのです。
そこに追い打ちをかけるのが、親の焦りです。「もう秋なのに」「早く決めないと出願に間に合わない」という気持ちから、つい「どこでもいいから決めて」と急かしてしまう。ですが子供の側からすると、プレッシャーをかけられるほど、頭の中が真っ白になってしまいます。
親がまず見直したいのは、「決めさせること」を急ぐのではなく、「子供が自分の気持ちに気づく手伝い」をするという視点です。志望校は最終的なゴールであって、そこにたどり着くための道筋は、子供自身の中にすでにヒントがあることが多いのです。
家庭でできる第一歩はシンプルです。「どんな高校生活を送りたい?」と聞いてみること。偏差値や学校名の話をする前に、まず生活のイメージから話してみると、子供も答えやすくなります。
親がやりがちなNG対応とその理由
志望校の話になると、つい出てしまう言葉があります。
「もう時間がないんだから早く決めて」
「そんな学校でどうするの」
「〇〇の方が絶対いいと思うけど」
これらの言葉、決して悪気があって言っているわけではありません。むしろ子供の将来を思うからこそ、つい口に出てしまうものです。
ただ、なぜこうした対応が逆効果になるのかというと、親自身の不安が子供にそのまま伝わってしまうからです。親が焦っていると、子供は「自分の意見を言うと否定されるかもしれない」と感じ、本音を話すこと自体を避けるようになります。結果として、余計に志望校が決まらない状況が長引いてしまう、という悪循環が起きやすいのです。
見直すべきポイントは、まず親自身が落ち着くことです。難しいことのように聞こえるかもしれませんが、具体的には次のようなことから始められます。
– 進路の話をする前に、一呼吸置く
– 「今日中に決めなきゃ」という前提を一旦手放す
– 子供が疲れている時間帯や、勉強直後を避けて話す
例えば、夕食後にリラックスしているタイミングや、車で移動している時間など、子供が構えずに話せる場面を選ぶだけでも、会話の質は変わってきます。
子供の「やりたい事」を引き出す会話のコツ
ここからは、具体的にどんな会話をすればいいのかを見ていきます。
質問の仕方を変えてみる
「将来何になりたいの?」という質問は、実はかなり答えづらい質問です。将来の職業をイメージできていない子供にとっては、答えようがない質問だからです。
代わりに、こんな聞き方を試してみてください。
– 「学校でどんな時間が一番楽しい?」
– 「時間を忘れて熱中できることって、最近何かあった?」
– 「もし勉強しなくていいなら、何をして過ごしたい?」
これらの質問は、将来の職業を聞いているわけではなく、子供が「今、何に心が動いているか」を聞いています。実はこの部分にこそ、進路のヒントが隠れていることが多いのです。
例えば「友達と何かを作っている時間が楽しい」という答えが出てきたら、そこから「ものづくりができる学科がある学校」「文化祭が盛んな学校」といった方向性が見えてくるかもしれません。
聞き役に徹する
会話をしていると、つい親がアドバイスをしたくなったり、子供の発言を否定したくなったりする瞬間があります。「それは無理でしょ」「もっと現実的に考えなさい」といった言葉は、良かれと思って言っていても、子供の口を閉ざしてしまう原因になります。
まずは最後まで聞く。そして「へえ、それでどう思ったの?」「もう少し詳しく聞かせて」と、子供の言葉を深掘りする姿勢が大切です。
会話の具体例
例えば、こんなやり取りがあったとします。
親「最近、学校で楽しいことある?」
子「うーん、美術の時間かな」
親「へえ、美術のどんなところが楽しい?」
子「自分で考えて作るところ。正解がないのが好き」
親「なるほどね。それって、他の教科にはあんまりない感覚?」
子「うん、数学とか国語は答えが決まってるから、ちょっと違う」
この会話だけで、「自分で考えて作ることが好き」「正解のない世界に興味がある」という子供の傾向が見えてきます。すぐに志望校が決まるわけではありませんが、こうした小さな気づきの積み重ねが、後々の進路選びにつながっていきます。
家庭での実践ステップ
会話のコツがわかったところで、実際に家庭でどう取り入れていくかを整理します。
**ステップ1:進路の話をする時間を決める**
毎日でなくて構いません。週に1回程度、「進路のことを軽く話す時間」を作ってみましょう。ただし、テーブルに向かい合って改まって話す必要はありません。食事中や車の中など、自然な場面の方が子供も話しやすくなります。
**ステップ2:子供の言葉をメモしておく**
会話の中で出てきた子供の言葉は、忘れないうちにメモしておくことをおすすめします。子供自身は何気なく言った一言でも、後から見返すと進路のヒントになっていることがよくあります。
**ステップ3:「やりたい事」と学校の特色をつなげて一緒に調べる**
子供の興味の方向性が見えてきたら、それに関連する学校の特色を一緒に調べてみましょう。「自分で考えて作るのが好き」なら、探究学習に力を入れている学校や、文化祭・部活動が盛んな学校などが候補に挙がってくるかもしれません。
よくある失敗例と対処法
ここで、実際に多くの家庭で起きがちな失敗パターンも紹介しておきます。
**失敗例1:質問攻めにしてしまう**
「好きな教科は?」「将来どうしたい?」「どの学校がいい?」と、一度にたくさん質問してしまうと、子供は答えるだけで疲れてしまい、かえって心を閉ざしてしまいます。
対処法はシンプルで、一度の会話で聞く質問は1つに絞ることです。焦らず、少しずつ会話を積み重ねていく方が、結果的に多くの本音を引き出せます。
**失敗例2:子供の答えを否定してしまう**
「そんなの無理でしょ」「もっと現実的に考えて」といった反応は、子供にとって一番言われたくない言葉です。たとえ現実的に難しそうな話でも、まずは一旦受け止めることが大切です。
対処法としては、「そう思うんだね」と一度受け止めてから、「じゃあ、そのためには何が必要か一緒に調べてみようか」というように、現実的な話は後から加えるようにしましょう。
**失敗例3:親が結論を急いで誘導してしまう**
会話をしているうちに、つい「じゃあこの学校がいいんじゃない?」と親が結論を出してしまうことがあります。これでは結局、子供の意思ではなく親の意思で決めることになってしまいます。
対処法は、結論を出す期限を必要以上に決めすぎないことです。もちろん出願の時期は決まっていますが、それまでの過程では「方向性を一緒に探す」という姿勢を保つことが、子供自身の納得感につながります。
まとめ
志望校が決まらない状況は、親にとっても子供にとっても不安なものです。ただ、その原因は多くの場合、子供の意思がないからではなく、「言葉になっていないだけ」というケースがほとんどです。
今日からできることは、次の3つです。
– 「将来何になりたい?」ではなく「今、何に心が動いている?」を聞いてみる
– 子供の答えを否定せず、まずは最後まで聞く
– 出てきた言葉をメモして、後で振り返れるようにしておく
志望校選びは、子供が自分自身と向き合う大切な機会でもあります。焦らず、対話を重ねながら、親子で一緒に答えを探していきましょう。
